家の安全を守る上で、玄関ドアのセキュリティは最も重要な要素の一つです。そして、その防犯性能は、ドアノブと鍵、この二つの要素がいかに連携して機能するかによって大きく左右されます。一昔前の住宅では、ドアノブと鍵穴が一体化したインテグラル錠が主流でしたが、このタイプは錠前本体がドアノブと連動しているため、ドアノブ自体を破壊されると簡単に侵入されてしまうという脆弱性がありました。このため、現代の防犯意識の高い住宅では、レバーハンドルなどのドアノブと、鍵を司るシリンダーが完全に分離した構成が標準となっています。この分離型の最大のメリットは、それぞれを独立して強化できる点にあります。例えば、鍵の部分には、ピッキングやドリル破壊に強い高性能なディンプルシリンダーを採用し、さらに補助錠を追加して「ワンドアツーロック」にすることで、侵入に要する時間を格段に引き延ばすことができます。空き巣は侵入に五分以上かかると諦める確率が非常に高いと言われており、鍵が二つあるというだけで、視覚的な防犯効果も期待できます。一方、ドアノブ側にも防犯対策は欠かせません。サムターン(室内側の施錠つまみ)を外部から特殊な工具で回して解錠する「サムターン回し」という手口に対抗するため、ボタンを押さないと回せない空転式のサムターンや、取り外し可能なサムターンなどが開発されています。また、ドアノブとシリンダーの周りに、外部からのこじ開けや破壊を防ぐための頑丈な「防犯プレート」を取り付けることも非常に有効な対策です。どれだけ高性能な鍵を取り付けても、ドアノブ周りの対策が疎かであれば、そこが弱点となってしまいます。ドアノブは扉を開けるための道具、鍵は扉を閉ざすための道具。この二つを、それぞれ最適な防犯性能を持つ製品で組み合わせ、システムとして玄関全体のセキュリティを考えること。それが、大切な家族と財産を犯罪から守るための、最も基本的かつ重要な考え方なのです。