車のエンジンをかけようとキーを差し込んだ瞬間、びくともしない。そんな経験はドライバーなら誰しもが焦る瞬間です。しかし、多くの場合、このトラブルは故障ではなく、簡単な操作で解決できることがほとんどです。最も一般的な原因は「ハンドルロック」という盗難防止機能が作動していることです。これは、エンジン停止後にハンドルを動かすとかかる仕組みで、キーが回らないようにロックされます。解除方法は非常に簡単です。まず、キーをイグニッションシリンダーに差し込んだ状態で、ハンドルを左右どちらかに少しだけ力を加えながら動かしてみてください。同時に、その動きに合わせてキーを優しく回そうと試みます。ハンドルを左右に小刻みに動かしながらキーを回すのがコツです。すると、カチッという小さな音と共にロックが外れ、キーがスムーズに回るようになるはずです。この時、焦って無理な力でキーを回そうとすると、キーが曲がったり、最悪の場合は折れてしまったりする危険性があるため、あくまで優しく操作することが重要です。また、オートマチック車の場合は、シフトレバーの位置も確認しましょう。シフトレバーが「Ｐ（パーキング）」または「Ｎ（ニュートラル）」に入っていないと、安全装置が働き、キーが回らない仕組みになっています。特に、駐車時に完全にＰレンジに入っていなかったというケースは意外と多くあります。これらの基本的な操作は、いわば車の「ご機嫌」を直すための対話のようなものです。力ずくではなく、車の仕組みを理解し、正しい手順でアプローチすることが何よりも大切です。まずは慌てずに、この二つの基本的なポイント、ハンドルロックの解除とシフトレバーの位置確認を試してみてください。ほとんどの「キーが回らない」トラブルは、このいずれかの操作で解決へと導かれるはずです。