分譲マンションの鍵を交換する際、費用の差がどこから生まれるのかというと、その最も大きな要因は「鍵の防犯性能」にあります。一般的に、セキュリティレベルが高い鍵ほど、その構造は複雑になり、素材も高価になるため、交換費用も高額になる傾向があります。例えば、一昔前のアパートなどでよく見られた、鍵の側面がギザギザになっているディスクシリンダーやピンシリンダーキー。これらは構造が比較的単純で、ピッキングの被害に遭いやすいという弱点があります。そのため、シリンダー自体の価格も安く、交換費用も比較的低く抑えられます。しかし、現代の分譲マンションで標準装備されていることの多いディンプルキーは、全く次元が異なります。ディンプルキーは、鍵の表面に深さや大きさの異なる複数の窪み(ディンプル)が設けられており、内部のピンも上下左右など複雑な配置になっています。これにより、ピッキングによる不正解錠が極めて困難になっています。この複雑な構造を実現するためには、精密な加工技術が必要となり、それがそのまま部品代に反映されるのです。さらに、メーカーによっては特許によって合鍵の不正な複製を厳しく制限しているため、純正の部品を取り寄せる必要があり、価格が高止まりする一因ともなっています。また、カードキーや指紋認証などの電子錠の場合は、話はさらに変わってきます。これらは機械的な構造に加えて、電子回路や認証センサー、モーターなどの電子部品で構成されています。そのため、シリンダー交換というよりも、電子機器の修理や交換に近くなり、部品代だけで数万円から十数万円に及ぶこともあります。自分の家の鍵が高いと感じた時、それはただの金属の塊ではなく、日々の安全を守るための高度な技術の結晶なのだと考えることもできます。防犯性能という安心感は、残念ながらコストと比例する。鍵の交換は、その事実を改めて認識する機会とも言えるでしょう。
防犯性の高い鍵ほど交換費用も高くなる訳