私は都内で数軒の民泊を運営していますが、ゲストとの鍵の受け渡しは運営上の最も大きな課題の一つです。スマートロックの導入も検討しましたが、コスト面や通信トラブルのリスクを考え、現在は頑丈なキーボックスを主力としています。不特定多数の外国人が利用する民泊において、キーボックスをどこに置くかは、利便性と防犯性、そして近隣住民への配慮という三つのバランスを極限まで突き詰める必要があります。私は以前から、子供が学校から帰宅した際や、急な来客時に鍵をどう渡すべきかという問題に頭を悩ませてきました。郵便受けの中に隠すのはあまりに不用心ですし、植木鉢の下というのも古臭い手法で、現代の防犯意識としては合格点を与えられません。そこで導入したのが壁掛けタイプのキーボックスでした。しかし、いざ設置しようとすると、自分の家の玄関周りのどこに置くのが正解なのか、確信が持てずに数日間は箱を手に持って家の周りをうろうろする日々が続きました。最初は一番分かりやすい玄関ドアのすぐ横にあるポーチの柱に取り付けようと考えました。操作もしやすく、暗い時間でも街灯の光が届くので便利だと思ったからです。しかし、実際にそこに置いて離れた場所から眺めてみると、銀色の金属の塊が異様に目立って見えました。これでは「ここに予備の鍵があります」と宣伝しているようなもので、防犯のプロでなくてもすぐに気づいてしまいます。私は慌てて場所を考え直すことにしました。次に目をつけたのは、玄関から少し離れた場所にあるガレージの裏手です。ここなら道路からは絶対に見えませんし、屋根もあるので雨に濡れる心配もありません。ところが、実際に自分で使ってみると、雨の日や荷物が多い時にわざわざガレージの裏まで回るのは非常に面倒だということに気づきました。防犯性は高いかもしれませんが、利便性が損なわれては本末転倒です。私は「隠れているけれど使いやすい」という矛盾した条件を満たす場所を必死に探しました。そして最終的に行き着いたのが、玄関アプローチにある装飾用のレンガ壁の裏側でした。ここは、来客の視線からは植栽に隠れて見えませんが、住人である私たちにとっては玄関に向かう動線上にあり、立ち止まって操作しても不自然ではない場所です。さらに工夫したのが設置する高さです。子供でも手が届くように低くしすぎると、かえって目についてしまうため、私の胸の高さくらいの位置に固定しました。子供には踏み台になるような大きな石を近くに配置することで、大人には自然な高さ、子供には少し工夫が必要な高さというバランスを取りました。この場所に設置してから数ヶ月が経ちますが、今では家族全員がストレスなく鍵を受け渡すことができています。場所一つで、不安が安心に変わるのだと身をもって実感しました。
玄関周りで鍵の保管場所に悩んだ私の選択